2021年３月、コロナ禍の中、美麻小中学校卒業式で15人の子ども達が卒業しました。美麻小中学校は義務教育学校という小中一貫校なので、９年間をここで過ごした子ども達、移住で途中から転入してきた子ども達、山村留学生としてここで暮らした子ども達、そして小規模特認校制度により大町市の旧市街地から通ってくる子ども達がいます。

美麻小中学校では、総合学習の時間に美麻市民科と夢の時間があります。

美麻市民科はグループで地域に学ぶ学びで、特に７、８、９年の３年間はテーマを継続して多くの地域の人やボランティアが関わって学びます。夢の時間は５年生から９年生まで、個々の学習として自分でやりたいことを決めて自ら学びます。

この春に卒業した子ども達は、美麻市民科で６年生のときから美麻の宝物探しをしてきました。６年生の頃は調べたことを地図にして、地域を訪れた観光客に配布し、地域巡りをしてもらおうと考えていました。しかし、調査が終わってまとめてみるとその内容はあまり目新しいものもなく、それでは美麻を訪れた人たちに興味を持ってもらえないと思いました。その時の感想として情報量が少なすぎると私も指摘しました。

７年生になり、新たに何を目標にするのか、話し合って決めたのがご当地かるたづくりでした。そこから彼らが行ったのは、ひたすら地域をまわって地域のお年寄りや様々な人からの聞き取りでした。名所、旧跡、食文化、伝統文化、祭り、民話など様々なことを調べました。

８年生の終わりになって、９年生になったら地域かるたを作りたいので資金が欲しいとの相談がありました。そこでコミュニティ・スクールの学校を支えるボランティア組織である美麻スクールパートナーズでは、大町市のまちづくり助成金の獲得を目指して動きました。子ども達からの思いや活動実績などの情報とパートナーズのサポートをプレゼンし、審査の結果、約47万円をいただくことができました。本来は子ども達がプレゼンを行う予定でしたが、それはコロナ禍の中でかないませんでした。

９年生になった子どもたちは、話し合ってそれぞれの役割分担を決めました。地域を調べる係、歌をつくる係、絵を描く係、ガイドブックをつくる係、地図を作る係等です。多様な子ども達のすべてが、こうして自分の特性を生かしてどこかに居場所を作りました。

かるた制作には印刷のプロや様々な地域のボランティアの指導を受けました。制作期限が迫る中、歌がそろわない、よい言葉が見つからない、歌のレベルが足りないと悩み始め、ついに地域に歌に関するアンケートを出しました。自分の作った歌へのアドバイスやうまくできない歌への提案を募集、その結果多くの地域の人からアドバイスの手紙と励ましの手紙が来ました。それをみんなで読み上げながら歌の修正をしていきました。こうして子ども達は多くの人と出会い、多くの人にアドバイスをもらいながらかるたづくりを進めました。

卒業が迫る中、ようやく３月にかるたが200部完成、卒業に間に合いました。お世話になった人へお礼に行ったり、協賛してくれた地域の方たちにかるたを配ったりしました。地域のかるた制作への協賛者は、実に70人を超えていました。大町市の牛越市長訪問をしてカルタの完成を報告、市長さんからもそのできばえを絶賛していただき、子ども達とその場でかるた対決もされました。助成金報告会でも子ども達は堂々と発表し、質疑応答もこなして審査員から大変よい評価をいただきました。かるたの出来の良さに新聞各社が取材し掲載、大きな反響がありました。さらに美麻地区出身者会のふるさと美麻会会員からは多くの注文がありました。

こうして多くの大人を感動させた子ども達、それを支える大人、それが私の自慢のまちです。美麻カルタは、美麻小中学校や地域の施設、お店、宿、図書館などにもあります。ぜひ手に取ってみてください。

前川浩一（大町市定住促進アドバイザー）

• 前川さんの関わる「美麻地域づくり会議」のホームページはこちらからご覧ください。