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リレー・エッセイ 第21回 雪のある暮らし

雪かき

 昨年の12月のはじめ日中も氷点下の日が続き今年こそは雪が多いかもと、期待していました。しかし、これを書いている1月中旬の我が家の庭先には10センチも積もっていません。ここ3年ほど雪不足が続き、ガッカリというか心配というか、雪はどこに行ったのでしょう?

 雪国に生まれ育った人の話を聞くと、雪かきが面倒だとかスタッドレスタイヤが高いとか、雪があまり好きではないのかなと思うことがあります。それは雪が多い時代に苦労したせいかもしれません。しかし関東出身の私にとっては、雪国の暮らしは子どものころからのあこがれでした。
大町市に来る前に宮城県の山中に暮らしていた事があります。

 そこは毎年1m以上の積雪がありました。しかも除雪機が無く「除雪ダンプ」と言う手押しの道具を使っていました。1週間に3日〜4日間は吹雪が続き、風と雪が止んだ時に公道(公道は除雪してもらえる)から住居まで、50mほどの距離を手で雪かきします。はっきり言ってとてもしんどかったです。

snowfall 1m一晩で積雪1mの朝

josetsu雪かきダンプで雪かき中

 しかしつらい雪かきも工夫次第で楽しめるようになりました。まずは雪かきのルートを根雪(地面に積もって溶けない雪)になる前に計画しておきます。ポイントは、斜面など雪を落とす(捨てる)場所を作ること、できるかぎり一筆書きにし切り返しを作ることです。シーズン降り始めにルートにそって雪かきをして、降り続くうちに道のようになり壁ができます。あとはルートに積もった雪をひたすら押し出して斜面下に捨てればいいのです。斜面に落とせない場所では、足元を固めながら捨てて進んでいくと延々と道が伸びていきます。さらに足元に雪を盛り上げて固めていくと山になり、とてつもなく大きな雪捨て場ができました。

 雪かき作業の間は体がぽかぽか。終了後に家に入り薪ストーブの前で飲むドリンクがとてもウマかったです。

 休憩後は倉庫からスキー板を引っ張り出します。歩いて登って2〜3回のターンでも楽しいもので、雪かきでできた山をジャンプ台にして飛びます。トリックの練習などもできます。こんな感じに作業ではなくエンターテイメントとして考えられるようになると、やる気が出てきました。

bcskiing山スキー、背負って登って滑る

冬景色

 それから、雪景色も美しいものです。昨年のやりっぱなしの畑やしまい忘れの三輪車など、すべてのものが雪に覆われて記憶から消えます。そして晴れた日は真っ白に、満月の日にはキラキラと輝く銀色の景色に変わります。針葉樹の深い緑の葉と降り積もった雪のグラデーションも冬独特の景色です。

 大町に引っ越してから、先に述べたような冬らしい冬を堪能できたのは最初の方だけで、後はずっと雪不足。雪かきが無いと体は楽なのですが、やはり物足りなく感じます。このまま雪が降らなかったらどうしようと、不安な気持ちにもなります。
ウィンタースポーツを楽しむにも、森が健康に冬眠するためにも、充実した冬を過ごすには、この極端な気候変動をどうにかする必要があると思います。家では薪ストーブとマキ風呂で炭素循環をし、まめな消灯やアイドリングストップなどできる事をしていますが、はたして子どもが子育てする時に近所でスキーやかまくら作りが出来るのか? 北アルプスの頂上にしか雪が無いなんて言う悲しいことにならなければと切に願います。

 最後に、田舎暮らしを楽しむには受け身ではだめです。大変な雪かきを面白くする工夫、極寒の雪景色を美しいと思える発想。言い変えれば暮らしを創造していく力が豊かな生活につながると思います。

 ではでは…雪国での楽しい時間が、皆様に訪れますように…。

tsurara kids子どもとつらら遊び