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リレー・エッセイ 第5回 稲作りの中盤を過ぎて

thumb taue田植えの様子 稲作をしていて、どういう時が一番嬉しいですか、とよく訊かれるのですが返答に困ります。というのは稲作をしていると嬉しい事がたくさんあり、いつとは答えにくいのです。

 種をまいたあと一斉に芽が出揃った時、立派な苗が青々と出来上がった時、田植が終わって美しい苗が田んぼにきれいに整列した時、植えた苗が根付くと葉に濃い色が付いて次の新しい葉を展開していくのですが、そういう成長を観察している時、などが嬉しいです。収穫までのあいだ何回もどきどきした楽しい気分になります。
(何回も心配で不安な気分にもなります。)

thumb kusatori手押し除草機 いろんな嬉しい気持ちの中でどれが一番嬉しいかはわかりません。けど、一番安心した、ほっとした気分になる(可能性がある)時期があります。
 それは穂が出揃う頃で僕の場合ちょうど今頃、お盆の時期となります。
 大町ではお盆の頃には夜温はずい分下がります。昼夜の温度差が大きいと作物が実を熟すのに有利です。光合成が出来ない夜間は温度が下がり、稲が呼吸をお休みすると日中光合成で蓄えたデンプンを消耗する事がなく、効率よくデンプン蓄積が出来るからです。なのでお盆頃に穂が出ると良いと思います。
(それより出穂が遅いと登熟温度が足りない恐れも生じます。)

 ただ穂が出れば良い、という訳ではありません。安心できる可能性がある、という事で、それというのは、この頃の田んぼや稲の姿で秋の収穫の結果がほぼわかるので、状態が良ければとても安心できるかも知れない、という事なのです。(つまりすごくがっかりする可能性もある、という事です。)
thumb shussuiお盆の頃の田んぼ 穂が出る時、理想通りに茎数が確保され、茎の先には理想の大きさの穂が着いていて欲しいです。それらは多ければ良いというものではありません。茎や葉が繁り過ぎていると風とおしが悪くなり、秋の長雨の時などは病気の原因となります。穂も実が多く着き過ぎると実りが悪くなり品質低下の原因となり得ます。逆にそれらが少な過ぎると不作になります。
 稲の姿や色も大事です。葉がピンと立って光を受ける姿勢が良い状態でありたい。栄養が有り過ぎると葉が垂れ気味となります。栄養過多だと葉色は濃くなり、病気にかかり易かったり、収量は多くても味が低下します。葉色が薄過ぎると栄養不足や根の不調が考えられ、収量低下が心配されます。
 お盆の頃に以上の様な事について田んぼが満足のいく姿であれば、春からの努力や苦労も報われた気持になるし、豊作を期待しながら安心した気分で収穫までの毎日を過ごせるのですが。

thumb inekariさて、今年のできは? では今年はどうだったか。お盆も過ぎ、穂が出揃う時期となりました。
 満足といえる田は全体の半分くらいでしょうか。反省点もあるのですが、良かった田については来年同じ事が出来るか、というとその自信もありません。稲作りは難しくやればやる程謎が深まります。
 早く来年になってまた稲作りがしたいです。  

(大町市定住促進アドバイザー:山本晃司)