冬から春にかけて、農家は閑散期と思われている方も多いと思いますが、りんご農家は結構忙しいんです。
りんごの樹が休眠している積雪期に剪定作業を行います。陽当たりを求めるりんごの樹、先々の成長を見据えて枝を整理する作業ですが経験が大切。一年に一回しか出来ない作業なので中々上達できないのが悩みの種。
例年大町ではGW前に桜が咲き、その桜が散った後のGW明けにりんごの花が開花します。桜がまだ蕾の4月に入った頃から消毒作業もスタートし、りんごの樹も動き始めます。
この時期、畑仕事をしていて何より癒されるのがアルプスの眺め。観光道路沿いにある私の畑は、傾斜地のために作業は大変ですが眺めは最高にいいロケーション。こんな畑を借りる事が出来たのは本当に幸せです。地元の方はよく「ここはなんもねぇだ」と言われます。が、こんな素晴らしい自然は何事にも変える事のできない物だと思っています。
今年は平年より10日程早く開花したりんごの花。受粉は昆虫に任せていると不安なので人工授粉を行います。それが終わればあとはひたすら摘花・摘果作業が続きます。
1箇所に4輪から6輪の花を咲かせるりんご、その中心部の花以外は摘み取ります。さらに最終的には4から5箇所を一つにします。つまり花40個から50個の中でりんごになるのは一つだけとなります。畑全体でどれくらいの花が摘み取られるのかは数えられないくらい。店頭に並ぶりんごは、そんな選抜をされた果実なんです。
収穫まで、早い品種でもあと3ヶ月、遅い品種だと5ヶ月半、毎日少しずつですが確実に成長していくりんごに手を掛ける日々が続きます。
それにしても、まさか自分が農業をするとは10年前には想像もしていませんでした。そして今、りんご作りや自家消費用の野菜を育てる事が楽しいと思えている自分に驚いています。
農業とは全く無縁だった私にりんご作りを教えて下さった研修先の農園、その農園を紹介してくれた市の関係者の皆様には感謝しかありません。
本当に美味しいと思う大町のりんご、この自然環境が作り出す果実をこれからも作り続けていきたいと思っています。