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第61回 学校図書のボランティア 大町の民話

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たくさんの民話の本

地域の人たちが「スクールパートナーズ」として多数ボランティア参加する美麻小中学校。新たに、図書館ボランティアが立ち上がりました。お手伝いするのは、読み聞かせや本の整理など。以前から関心があったので立ち上げから参加しています。

読み聞かせは大好きなのですが、アクセントに難があるのが東北出身者の定め。かつては、市立大町図書館主催の朗読講座に通いアクセントにも気を遣いましたが、今は自分を生かせる絵本選びをするようになりました。

アクセントに難があり、声はちょっと低めで大きい、私のこの特徴を生かすのはズバリ、「ちょっぴり怖い民話」。おばけ、ユウレイ、鬼、やまんばなどなど。田舎感のあるアクセントと「待て待て〜〜!」「食ってやる〜!」の低音のシャウトが、絵本の世界に子どもたちを引きずり込んでいるような気がします。

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学年ごとの図書の時間に読み聞かせをしています(写真は別のボランティアさん)

ありがたいことに、司書の先生は、「八木さんが読むと、民話の世界を100%堪能できる」と・・。「じごくのそうべえ」を読んだ時には、「八木さんの『じごくのそうべえ』が一番だ!」と声をかけてくださった先生も。ああ、訛(なま)っていてよかった、怖い声でよかった、なんて思えるのは、図書のボランティアをさせていただいていればこそ。そして、子どもだけでなく、ボランティアの大人のこともこうして褒めて育ててくださる学校だからこそ。

私自身がボランティアに関われば関わるほど、地域でボランティアに関わろうとする人が多い理由がわかってきたような気がします。

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民話の本。図書館にはまだまだたくさんあります

民話への関心が強くなって最近見つけたのがこちらの本。

大町由来の民話の本です。学校の図書館だけでもなん冊も見つけました。

本によっては1冊で380編以上のお話を収めています。なにより驚いたのは、大町の中でも美麻・八坂に限定した本があること。

もちろん、地域の図書館にも信州の民話がずらり。

学校の司書の先生にお聞きすると、全国でも信州・大町は民話が多いのでは、とのこと。冬場の長い農閑期などに今に伝えられる民話の元となるお話が作られたのでは、ともおっしゃっていました。

ページをめくっていくと、ほんわかした話の少ないことに驚かされます。悲しい話、艶っぽいもの、いじめの色が強いものも少なくありません。

どことなくドロドロとしたものを感じさせます。子ども向けとは言い難いのです。ドイツのグリム童話が実は怖いと聞きますが、大町のお話もなかなか負けていません。

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美麻と八坂に伝わるお話だけを収めた本

なぜだろうと考えてみれば、民話の素材は貧しい農村での出来事。楽しいことばかりでなどあるはずがありません。大町には今でこそ田畑をやりたいという希望を胸に移住してくる人たちが増えていますが、その昔、望んで農作業に携わった人がどれほどいたでしょうか。

ストレスに満ち、はけ口を探す。おそらくそんな日常は珍しくなかったのではないでしょうか。ささやかな幸せにもたどり着けず不満が爆発すれば、その姿を鬼などに例えることもあっただろうと想像します。

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「夢買い長者」。文も絵も 大町在住の方々によるものです

私の持ち味を活かせそうなお話が多い大町の民話ですが、今週読み聞かせしたのは「夢買い長者」。怖さゼロ、ファンタジー的なお話です。

最後に蛇が金貨になり、歩荷(ぼっか)が長者になるお話ですが、読み聞かせの後、「本当の話‥?」とは小学5年男子の質問。

聞き覚えのある地名があり方言がある大町が舞台の民話は、ここに住む子ども達に、他のお話からは感じられないリアリティを感じさせてくれるようです。

移住者の多い土地柄ですが、子ども達にとってはここ大町がふるさと。

往時を偲(しの)ばせる民話は、子ども達が自然にこの土地に根っこを生やしていくことに一役買ってくれている気がします。

大人向けのお話も多い大町の民話、いつか皆さんも読まれてみてはいかがでしょうか。


八木真紀子(大町市定住促進アドバイザー)


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