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第63回 花粉症の木こり

今回の話、花粉症の方で心臓の弱い方はご注意です。

僕は10年ほど前から林業をしていますが、前はこんなに花粉症ではなかったと思います。年々鼻水やくしゃみの程度がひどくなっている気がします。

スギやヒノキの木は年中伐採します。ですが、春は本当にやめてほしい。

山に入る前にふと見上げると、杉の木の枝先にたわわに実った黄色い物が…、1本倒せば煙のように舞う花粉。映画のワンシーンだったら格好良いかもしれませんが、チェーンソーを持ち、立ち尽くす山男は実は動けないのです。山々にこだまする「くしゃみ」、帰ってくる仕事仲間の「くしゃみ」。立ち尽くしてしまうのは、花粉で呼吸器官だけでなく全身が反応し、ゾクゾク寒気がするからなんですね。くしゃみも止まりません。「へっくしゅん、へっくしゅん」と発作のように繰り返し、顔もあげられません。しばらくして、花粉煙が晴れた後、次の1本を伐るわけです。

 
 

 

 

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杉花粉が収束に向かう頃、今度はヒノキの花粉が舞いはじめます。

最近の木こりは、山だけでなく町でも仕事をします。家の周りの大きくなってしまった木などを伐るのですが、屋敷林って杉が多いんですよね。また、街中だと倒す場所が無いですから、そういう時は木登りをして梢の方から少しずつ切り落としていくわけです。花粉がたわわについた枝をかき分けながら、登っていくわけです。時には、枝を切って投げたりします。持った瞬間にプワッと花粉が舞います。くしゃみが止まりません。地上20mくらいです。必死です。命綱をしているので両手を離しても木から落ちることはありません。ですが、この高さでくしゃみが止まらないのは、とってもストレスです。

僕の所属する山仕事創造舎(大町市の林業会社)では、花粉症の人が半分以上はいます。比率としては多いかもしれません(暴露しすぎて花粉症になったとひそかに思っています)。ここだけの話、林野庁が杉を伐る補助金を出してくれないかな。みんなが喜ぶし、GDPも上がるんじゃないですかね。そんな乱暴な事を考えてしまうほど、この季節は憂鬱です。

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有名な仁科神明宮の3本杉

話は変わり、先日キノコの駒打ちをしました。毎年子どもたちに手伝ってもらいますが、さすがに手慣れたものです。去年はナメコやキクラゲも打ちましたが、今年はシイタケだけにしました。奥さんに言わせると、シイタケは使い勝手が良いそう。余っても干しシイタケにできるらしいです。と言うか、「他のキノコいらない」と言われてしまいました。去年まであんなに打ったのにさ。小学生の娘は、学校の授業でキノコの駒打ちをする際、みんなに教えてあげたそうです。今、植菌すると収穫は来年の秋です。

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キノコの駒打ち──最初から手伝ってくれた姉は疲れ気味

最後になりますが、花粉症の人は癌になる確率が低いらしいですね。理由は免疫反応のせいだそうです。癌という病気は、日々生まれては消えるがん細胞が消えない状態のことを言うそうですが、花粉までも敵とみなし異常に攻撃してしまう免疫力の持ち主(=花粉症の人)は、癌細胞を消す確率も高いようだと、何かで読みました。花粉症の身としては、少し救われた気もしますが、この時期、気持ちは病気の様なものです。

 


川面 優(大町市定住促進アドバイザー)