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第68回 山村留学生を男女混合で受入れました~「個人体験」について

写真:ブルーベリーの苗をみんなで植え付け
ブルーベリーの苗をみんなで植え付け

3回目の山村留学生の受け入れを始めてから、早いもので半年が経ちました。

今年度は女子2人と男子2人の混合チーム。混合チームが来るとは想定外でしたが、かつては珍しくないことだったそうです。始まってみれば、当たり前なのでしょうが、女だから楽、男だから大変、みたいなことはないということがよくわかります。

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収穫した小麦でピザ作り

下は4年生から上は9年生まで、我が家の8年生の娘を含め、時には小競り合いがあったり涙を見せることもあるけれど、ほとんどは猫の子のようにじゃれ合っています。下の子が悩んでいれば上の子がしっかり話を聞いてやり、上の子が疲れていれば下の子が肩もみしてみたり。仲良きことは美しきかな。

さて、山村留学生は年間を通して、自分が興味のある課題を選び「個人体験」に取り組みます。

今年度我が家に滞在している最年長の女の子が、私の興味関心とがっつりかぶる課題を選びました。それは「野山で採れるものでスイーツを作る」というものです。サポートさせてもらったおかげで、私自身、例年以上に季節の楽しみを味わうことができました。山村留学生と送る農的な生活の中でも、今回のこの「個人体験」は私の中では特筆したい出来事でしたので、取り組んだものを少しご紹介したいと思います。

春はよもぎで始まります。外せないのはよもぎ餅。便利なもので、ホームベーカリーでお餅がつけるのです。もちろんあんこを入れて。

よもぎ餅
よもぎ餅
写真|柄を削り出したスプーン
作業の様子
写真|柄を削り出したスプーン
できあがり

たんぽぽシロップは、開いているたんぽぽの花が主原料ですが、曇っているときは閉じてしまうのがたんぽぽの習性です。嬉しいことに今年は晴天に恵まれることが多く、例年よりたくさんのたんぽぽシロップを仕込めました。ヨーグルトにかけたりパンに塗ったり。我が家では蜂蜜よりも人気かな。

写真|理科の実験を行う生徒
集めるのは開いたたんぽぽのみ
写真|入浴剤を作成する生徒
レモンと砂糖、水を加えます
写真|入浴剤を作成する生徒
煮詰めてシロップを作ります

雑草の代表格のすいば。見た目は今ひとつですが、味は悪くないのがすいばの若芽ジャム。

写真|美麻の花豆
摘むのは若い芽
写真|美麻の花豆
刻みます
写真|美麻の花豆
砂糖と煮詰めて完成

野生化したさくらんぼの木に登って実をとり、丁寧に種を取り除いてコンフィチュールに。

写真|星の教室の風景
丁寧に種を抜き取ります
写真|星座を学ぶ生徒
潰さないように慎重に煮ているところ

栽培しているものなので番外ではありますが、収穫からジャムにするまでのルバーブ仕事も子どもたち総出で行います。作ったルバーブジャムは、この個人体験に取り組んでいる本人が一人でルバーブタルトにしてくれました。サポートしてくださったのは、フランス生活が長かった山村留学センターの厨房担当の方です。粉から作ったバターたっぷりのタルトとルバーブジャムを使ったフィリングが、これ以上にないくらいの好相性で絶品中の絶品でした。

写真|角を加工する児童
いちばん時間がかかるのが刻み仕事
写真|皮を裁断している児童
加熱すると酸味が際立ってきます
写真|皮を裁断している児童
また作ってと誰しもが言ったルバーブのタルト

グミ、桑の実、すぐり、ナワシロイチゴ。採っては冷凍を繰り返し、溜め込んだ野の実とブルーベリーで作るローテグリュッツ。これだけの種類の実を十分に確保できる年は少なく、私自身久しぶりに作ったスイーツです。冷やしてアイスや生クリームと合わせて食べます。

写真|毛鉤に興味津々の児童
様々な野の実を煮詰めます
写真|毛鉤に興味津々の児童
今回はアイスクリームと一緒に。
ローテグリュッツはドイツのスイーツ。

季節が秋に進みました。この「個人体験」に取り組んでいる彼女は、今は栗をとって生クリームと混ぜて栗ペーストを作ったり、ハシバミも集めていると教えてくれました。

忙しい暮らしの中では、野の実は実っても手が追いつかず、毎年作れないものもあります。彼女が「個人体験」として取り組んだおかげで、今年味わえたものの多いこと。そうだハシバミで作りたいものがあったんだ、クズの花も使ってみたかったなどなど、私の中で野生の植物でまだまだやってみたいことがあったことも思い出させてくれました。

そしてまた、彼女の「個人体験」に、その他の3人の子どもたちみんなが常にサポートするのです。虫が苦手な彼女に代わって野の実を採ることもあれば、料理を手伝ったりする姿もみられました。彼女もまた手伝ってくれる仲間には、成果物をしっかり振舞ってくれます。互いに恩着せがましさなどなく、実に自然体。そんな様子を見るたびに、山村留学生としての日々の経験は、人生を通じて大切な財産となり、その人を支えていくんだろうなと感じ入ります。

今年の受け入れが半年を過ぎて思い出すのは、春のはじめ、混合チームを受け入れることになるかもしれないと知った娘がしばし黙ったのち言った一言。

「これからまた面白くなりそうだね。」

その言葉どおり、今年もまた、面白い日々を送っています。

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学校の自学のノートに私の似顔絵by小学4年男子画伯


八木真紀子(大町市定住促進アドバイザー)


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