いきなりですが、皆さんは「味覚の授業」をご存知ですか?
「味覚の授業」とは料理人や生産者などがボランティアで、小学生3~6年生を対象に、味の基本となる『塩味』『酸味』『苦味』『甘味』の4味に加え、第5の味覚である『旨味』について教え、味覚を意識してもらい、食の楽しみを学んでもらおうというものです。
もともとは、フランスで30年以上前に始まった「味覚の一週間」という食育活動の一部です。日本では、2011年から全国各地で実施されています。
私は調理師ですが、恥ずかしながら昨年までこのような活動が行われていることを全く知りませんでした。昨年、調理師会の安曇野支部(私は大北支部)の青年部の方とお知り合いになる機会があり、その方にお誘いいただき、安曇野市の小学校で行われる「味覚の授業」に参加して初めて知りました。
味の基本4味と第5の味「旨味」を紹介
安曇野市では既に12年前から行われていたことに驚きました。
安曇野市では、5年生を対象に調理師たちによって授業が行われていました。授業は2コマ(45分×2)で構成されており、最初の1コマは座学で、塩味の塩、酸味のお酢、苦味のダークチョコレート、甘味の砂糖、旨味の出汁などをそれぞれ味見してもらいながら授業を進めていきます。
最後にぶどう味のグミを鼻をつまんで噛んでもらい、鼻をつまんでいる指をはなして、嗅覚も食べる時には大きな役割をはたしており、食べる時には無意識に五感を使って食べていることを体感してもらって座学の授業を終わりにしています。
もうひとコマは、実際に昆布と鰹節で出汁をとり、野菜を入れた味噌汁を作る調理実習形式の授業をおこなっています。そして座学で学んだ塩味、酸味、苦味、甘味、旨味の組み合わせによってみんなが食べているおいしい食事はできていることを伝えています。
この座学の1コマだけですが、今年初めて大町市でも3年生と4年生を対象に大町西小学校と大町北小学校で開催することができました。この活動を毎年の恒例行事にしていければと思っています。
五感を使って本当の「美味しい」を学びます
この活動で驚いたのは、参加している調理師の皆さんが完全ボランティアであるということ。しかもお店をされている方々はお店をお休みにして参加されており、お勤めの方々はわざわざお休みを取り参加しているということです。
また学校側もこの授業のために3コマも時間を割いているということ。2コマは先ほど上述した座学と調理実習、最後の1コマは体育館に集まり、県職員や市職員の方のお話があり、児童と調理師全員で記念撮影をしておしまいという流れです。
「味」に興味津々の子どもたち
長野県に移住して感じたのは、いわゆる“学校の授業”とは別に体験型の授業があることです。実際に自分たち(もちろん地域住民などを含む大人たちの力も借りていますが)で大豆を育てたり、お米を栽培したり、ペットボトルでイカダを作って湖に浮かべて乗ってみたり、スキー教室やソリ教室があったりとかなり充実しているのではないかと思います。
今年は大町北小学校の4年生が味噌作りをしたいということで、そのお手伝いにも大町調理師会として参加しました。これも子供たちが自分たちで育てた大豆を使って味噌を作りたいということで実現しました。
子供たちにとってこのような体験は非常に貴重なものだと思います。また子供たちだけではなく、私にとっても非常にいい体験をさせてもらっていると思います。今後も自分が関われるところには関わっていき、子供たちとともに移住生活を楽しんでいきたいと思います。