
日陰からの眺め
朝は鳥の声で目が覚めて、畑のトマトに「よしよし」なんて声をかけて、北アルプスを眺めながらコーヒーを飲んで・・
そんなのんびりライフを夢見てましたが、現実はまだまだ、ほど遠い。
そりゃ当たり前、子供は育ちざかりが3人、夫婦は共働きスタイル。この土台は変わらないので、時間の流れはそうそう変わりません。
まず、車送迎問題。
例えば中学生の娘の場合。部活でよく試合があるのですが、試合会場が市外のところがほとんどで、ほぼ車送迎です。(まれにバスが出ますが)公共交通機関だけではたどり着けません。
送った後、試合も途中で終わるかもしれないし、どうするか…一度家に帰るか? ガソリン今いくらだっけ… なんて毎回迷うところ。そんなこんなで週末は終わります。
また、小さいところでいうと、疲れた日の救世主だったのはお惣菜でした。
「今日はもう買って済ませよう」って日に寄っていたデパ地下やお惣菜屋さん。ご飯が進むおかずを求める男子(夫含め)がいるので、1品でも何かあると大きい。かといって、スーパーにある揚げ物気分でもない・・。結局、慌ただしく鍋に火をかけながら「早く先に風呂に入れ~~!」と子供たちに吠え、缶ビールを手にする私です。
でも、そんな日々の中で、ふと「よかったな」と思えることもちゃんとあります。
これからの夏は格別です。
日陰に入ると、風が涼しくて気持ちいい!
子どもが外で遊んでいても、「あっつ〜!早く帰ろう!」とならずにそばで見守れる。これは都会ではなかなか味わえませんでした。子供たちの体力的にも安心です。先日も子供たちを噴水広場へ放ち、母は日陰でお昼寝しておりました。ただただ景色の良い場所でぼーっとする時間はとても気持ちがいいです。
そして我が家は風通しが良く、日中いないこともあり、クーラーをかけるのは1シーズンで10日もありません。

夏の味方、噴水広場
そして一番ありがたく感じているのは、人との距離感。
今年も、自宅の庭の芝張りのために、せっせと土を掘り返す作業を始めました。
土を掘って、大きな石を取り除き、砂を敷いて、土を戻して、芝を張る……
地味に重労働。汗だくで作業していた夫に、近所の方がふらっと来てこう言いました。
「機械持ってこようか?」
まさか、勤務先から本当に持ってきてくれるとは思わず、あっという間に、ブィーンと土を掘り返してくれたんです。感謝感激とはこのことです・・!

あっという間に土堀完了

今年の芝張りはここまで・・
さらに、今年は畑(家庭菜園)をする時間がほとんど取れなかったのですが、トマトの苗を分けてもらったり、栽培したレタスを摘んで「おいしー!」と一緒に食べたり。近所のみんなが帰ってくる夕暮れ時に家の前でのちょっとした会話が癒しになっています。
また、勤務先でも同様に感じています。東京にいた頃は、勤務先に地元が同じ人なんていたら、奇跡レベルです。大町に来てからの勤務先では、ほとんどが市民や近隣の市町村の方ばかりで、それにも驚きました。「昨日の雨すごかったね〜」なんて話から、いつの間にか地域のことも教えてもらえたり、「これ畑で採れすぎたからどうぞ〜」って野菜をもらえたり。どんな風に食べたらおいしいか教えてもらったり。
子どもが体調を崩したときも、「○年は学級閉鎖だよ〜」「○○小も流行ってるよ」なんて情報も早く、孤独感が和らぎます。
確かに、移住しても日々のバタバタは変わらなかったし、同じように疲れるし、時間の流れが急にスローになるわけでもなかった。
でも、生活の中には小さな余白はあって、その過ごし方が“自然”・“人”との関わりが圧倒的に増えているな、と今改めて感じました。
野老 忍(ところ しのぶ|大町市定住促進アドバイザー)