fbpx

第100回 気候変動

Image
リンゴ園から北アルプスを望む

 ここ数年、大町に限らない全国的な事ですが気温の上昇傾向が見られます。大町に移住してくる前は、ただ夏が暑いなあと感じる程度であったように記憶しています。移住後りんごを中心として生産する農業に従事するようになると、日々、月、季節そして、その年の気候に以前より敏感になったように感じます。私自身よりも、育成している果樹や野菜達の反応を見ていると、あぁ~温度が変わってきているんだなと見て取れます。

Image
リンゴの花
Image
摘果作業中

 りんごに関していうと生育に適した年間平均気温は10℃ほど。6℃から14℃の範囲でなら育成可能とされています。(それ以外にも冬の低温や一日の寒暖差も必要とされています。)私が移住してきた2013年の年間平均気温は9.6℃、そして2017年までは10℃前後で推移していましたが2018年以降は10℃を下回ることはなくなり、そして2023年には10.9℃、2024年にはとうとう11.2℃と初めて11℃を超える数値となり、今年の状況からすると昨年を超える平均気温となりそうです。このまま推移していけばりんごに適さない環境となってしまうのも、目の前まで来ているのかもしれません。野菜類も、定植する時期がズレてきています。例年だと8月下旬に植える白菜が、そのタイミングで定植した苗は高温で皆枯れてしまったようです。例年通りでは上手く育たないようになってきてしまいました。

Image
収穫まであと少し

 私は、大町で農業を営んでいくことを悲観しているわけではありません。環境の変化に合わせて、育成する作物の種類や育成する時期を適切に変化させていく、柔軟性が必要なんだろうと思っています。気候の変化を感じるこの頃ではありますが、ここ大町はまだまだ人々が生活しやすい環境なんだと思っています。

 一方、都会での生活は苛酷になってきているようです。首都圏で生活している親族は、夏はエアコンを切ることはできない、夜中でも切れた途端に目が覚めてしまうという話しをしていました。私は東京都練馬区生まれの練馬育ち、移住直前は練馬のマンモス団地に住んでいましたので、夜中でも30℃を下回らない気温を知っていますし、まとわりつくようなあの湿度に疲れ果てる夏を過ごしていました。

Image
今年のスイカ

 でも、記憶をたどり調べてみると1982年までは年間の最高気温が35℃前後でいわゆる猛暑日といわれる日が、あっても年間に数日程度でした。確かに小学生の頃、気温が低く夏休みのプール教室が休みになったことを覚えています。今では連日の猛暑日、最高気温は39℃を超える温度を記録しているとの事、本当に危険な気候となってきました。

 私は、縁あって移住という選択をし大町市に拠点を移し生活をしています。このことは本当にラッキーだったのかもしれません。私のような選択をしたくてもさまざまな要因で移住という選択を出来ない方も沢山おられるでしょう。移住となると、仕事や住居等々多くのハードルが存在するのも事実です。令和6年11月に施行された地方振興に係る「二地域居住の推進」の法律があります。国土交通省が旗振りをし、地方への人の流れの創出・拡大を図ろうとしています。冬はスキーインストラクターとして働き楽しんでいる私にはない選択ですが、夏には冷涼なそして冬には温暖な環境での生活も確かにありだと思います。

 一度きりの人生です。ご自身がそして家族が望む環境での生活をしてみるのはいかがでしょうか。


塙 慎一(大町市定住促進アドバイザー)